信州の瓦鍾馗を探して-13    煙出しにあった鍾馗さん

雪に被われる前に見ておきたいものがありましたので、北アルプスが雪化粧しはじめた晩秋のある日、修那羅峠(しょならとうげ、筑北村坂井)にある安宮神社へ向かいました。

安宮神社は標高1037mの地にあります。ここに養蚕の神様・桑姫さまが祀られています。

途中道が狭くなったり広くなったりのつづら折れの山道を上って行くと、険しい山懐に入ったという感が募ります。行き交う対向車の姿もありません。

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駐車場に車を置き、長い参道を歩き石階段を上ったところに古い社がありました。何気なく拝殿の屋根を見上げると…。あるではありませんか、鍾馗さんが!

「こんなところに鍾馗さん!」と喜び勇んでシャッターを切ったのはいうまでもありません。

明治期に建てられた拝殿で、すぐ近くに神職家族が住んでいます。

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神仏混合の社ということは聞いていましたので、「ここの社も粋な計らいを!」と思いながら…、社務所へ。

神職が留守だったので、奥さんにいろいろ聞きました。そうすると、上がっているのは安政年間に開祖した天武(修那羅大天武命)の姿を、氏子がここの神社創建した明治35(1902)年に寄進し祀ったものということで、鍾馗さんではないとのことです。

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瓦製のご神体を屋根の上に祀っていたわけです。言われてみてよく見ると、穏やかな表情は鍾馗さんのようでもあり、そうでもないような…迷ってしまいます。

天武の姿を知らない制作を任された鬼師は、鍾馗作りに慣れていてついつい鍾馗に似たものができ上がってしまったというのが本音かも知れません。

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目的の「桑姫さま」ともご対面できたので、山を下り坂井の街へ。坂井へ入るのは2回目ですが、前回は時間もあまりなかったのでしっかり探せていません。

何せ信州の鍾馗さん探しは、どこでいきなり遭遇するか分かりませんので、今度は隅から隅までと思い探索に入りました。

そうすると、旧坂井村にも正真正銘の鍾馗さんがいました。

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こちらの新築して間もないと思われる宅の、煙出し(?)の上です。

瓦屋根にばかり目が行っていたのですが、目の前に現れた時は「こんな現代的な立派な家の上に、鍾馗さん!」と、この時も驚きの声を上げてしまいました。

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見ての通り、手びねり古物の鍾馗さんです。

さらに別の地域を回ると…

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こちらも煙出しの上に上がっていました。こちらに見る煙出しは、蚕を飼っていた養蚕農家などによく見られた造りです。

採光、換気、煙出しのために、屋根の上に別の棟をもつ一段高く設けた小屋根で、越屋根ともいいます。

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そこにいた鍾馗さん。越屋根の熨斗(のし)瓦に両肘を乗せ、寄りかかっているようなやんちゃ坊主風で童顔ぽい鍾馗さんですが、立派なひげを蓄えています。

鍾馗探訪パートナーのnaoさんは、「とても良い顔ですね!ほっぺのあたりは本当の子どもの表情みたいです。台座の部分も雲にのっているみたい」と印象を語っています。

『鍾馗さんを探せ!!』の著者・小沢正樹さん(愛知県在住)が、一昨日と昨日、信州の瓦鍾馗探索に休暇を割いて来県されました。途中で落ちあい、これらの鍾馗さんを見て回りました。

「こんな山深いところにも鍾馗さんがあるのですね。奈良や京都とはまるで違いますね」と信州瓦鍾馗の分布の不思議さに改めて驚かれていました。

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