早春に現れる蝶といえばヒメギフチョウが知られていますが、いま安曇野で元気よく飛ぶこの蝶を見ることができます。
蝶の愛好家から「春の女神」と称され、人気の高い蝶です。
国内でヒメギフチョウが分布するのは、北海道、東北地方、長野県、山梨県の中部地方に限られます。分布地から分かるように、冷涼な山地に生息しています。
翅を広げると、黒と黄色の美しい虎縞模様が現れ後翅の外縁(弦月紋)はギフチョウが橙色に対し、ヒメギフチョウは黄色になっています。
このヒメギフチョウは、安曇野市穂高牧の野草園で撮ったものです。
近年、ヒメギフチョウの個体数が減少してきていることから、ここのご主人が10数年来、野草園に産みつけられた卵を採取し羽化させて野に放しています。
羽化した成虫は、晴れた日は午前9時ころから飛び始めるようですが、このころは長くは飛ばずまもなく止まることが多いといいます。しかし、時間を経ると活発に飛びまわりますので、なかなか撮影も難しくなります。
ヒメギフチョウの幼虫は林の中の湿り気のある地に繁殖するウスバサイシンを食草とします。また成虫は、カタクリやスミレ、ショウジョウバカマなどから吸蜜しますので、こうした条件が整った山地で見ることができるといいます。
吸蜜する花がなくなる頃、ヒメギフチョウは姿を消します。ですから、この美しい蝶に巡り合えるのは、早春の僅かの期間に限られます。
園内では運が良ければ、交尾しているヒメギフチョウの姿も見られます。
交尾を終えた雄は自分の粘液で作った硬い殻(交尾板)を雌の腹部先端につけ、他の雄と交尾できないようにするそうです。
ウスバサイシンの葉の裏にヒメギフチョウの卵が産みつけられていました。10日ほどすると孵化し幼虫になります。
それから40~60日くらいかけて蛹になり、蛹のまま越冬し来春の羽化まで過ごします。