安曇野市明科の東に隣接する松本市四賀五常、ここに8体の古い瓦鍾馗が残っています。いずれも特徴のある鍾馗さんといってよいかと思います。
いまは廃屋となっていることが一目で分かる軒端に対で飾られていた鍾馗さん。顔の表情やポーズ、大きさが酷似していますので同一鬼師が制作したことは間違いないでしょう。
しかし、似ているようで違っている。さて、どこがどう違うのでしょうか?
まずこちらの鍾馗さん。アンテナ柱とコードが被さっていて少し見にくいというか、邪魔になるのですか゛…。
この鍾馗さん両手で剣を握っていて、しかも握っているのは刃部分ではないでしょうか。
そして、反対側の軒にあるもう一体の鍾馗さん。
よく見ると顔つきは極めて似ていますが、持っている刀剣が違いますし、握っているのは刃ではなく柄の部分です。そして着衣のはね上がりも少し違えてあります。
この地を訪れたのは、紅葉が始まりかけた初秋の晴れあがった日。さわやかで、穏やかな昼下がりでした。
目はギョロっとしていて、三等身大の「ギョロ目鍾馗」です。
現地では同じように見えた鍾馗さんでしたが、後でよく見ると違っていました。
こちらは、討ち取った鬼の首を手にし、鬼首は正面を向いています。
少し離れたところに在ったもう一つのギョロ目は、捕えた小鬼を脇に抱え小鬼は天を向いて仰向け状態です。
実はこのギョロ目鍾馗は、三部作です。会田地区にももう一体上がっています(既出)。こちらの小鬼は前を向いた姿で、捕えられ鍾馗さんの腕から逃れないようです。
顔の向きや視線の先も、三体とも少しずつ違えていますね。
似たものを作っても同じものは作らない、鬼師の心意気といったものが垣間見えてきませんか。