姿を消そうとしいるコンクリ製3連アーチの常盤橋

穂高常盤と狐島地区の間を流れる穂高川に架かる常盤橋というコンクリート製の3連下路アーチ橋(ローゼ橋)があります。国道147号と同19号を結ぶ県道上にあり、全長100m余りの見た目に堅固ながっしりした橋です。

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この橋が架け替え工事に伴って、夏過ぎには取り壊される予定になっています。すでに昨秋から仮橋につなぐ仮設道路の工事も始まっています。仮橋はまもなく工事が始まり、夏ころまでに完成する見通しで、その後現在の橋が撤去され新しい橋の本格的な工事が始まるということです。

この常盤橋が完成したのが、今から50年前の昭和35(1961)年。白鳥飛来地、早春賦歌碑、「水色の時」道祖神なども比較的近くにあります。ですから半世紀にわたって市民はもとより観光で訪れた人々も、この橋から恩恵を受けてきたことになります。

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この常盤橋周辺は、以前からワサビ栽培が盛んであったところです。静岡に代わって主要産地となった安曇野のワサビ生産は、昭和35年に2千㌧を超し「ワサビ景気」が地域経済を潤しました。

常磐町交差点から常盤橋にいたる道の裏手に「狐小路」と呼ばれた450㍍ほどの通りがあります。界隈は、料亭、花街が軒を連ね夜な夜な賑わい「肩と肩を触れ合わせずには通れなかった」ということです。生産者や関係者が1日の仕事を終えた後、この橋を行き来したことでしょう。いわば、ワサビの隆盛とともに地域の歴史を刻んできた生活遺産としての3連アーチ橋ともいえるでしょう。

昔日の面影を残す常盤橋ですが、その命脈もあと僅かです。下路アーチ橋が全国的にそう多くなく、しかも鋼鉄製のものと違って、コンクリート製となると滅多に目にする機会も少なくなっただけに取り壊してしまうというのはとても残念なことです。

市内には豊科の犀川に8連アーチ橋(下の写真=田沢橋)が、取り壊されずに残っています。新しく架けられた橋を車道、8連アーチの旧橋は歩行者と自転車の専用として利用されています。

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この常盤橋もそのような“住み分け”で利活用することはできないものでしょうか。取り壊しや新たな歩道専用橋の設置費用も節減できるわけですし…。古いものをジャマもの扱いしないで、遺しながら活用する発想も必要ではないでしょうか。

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