安曇野市穂高にある碌山美術館は、穂高出身の近代彫刻の礎を築いた荻原碌山の作品を収蔵、公開しています。昭和33(1958)年に全国 30万人からの寄付金などにより開館にこぎつけました。
西洋中世風の小会堂を偲ばせる瀟洒な建物に碌山の彫刻・絵画・書簡等を展示しています。平成21(2009)年に国の登録有形文化財になっています。
明治37(1904)年、アメリカからパリを訪れた碌山はオーギュスト・ロダンの作品『考える人』に出会い、深い感銘を受け彫刻を志します。
碌山はその後、ロダンとも会い「人間を描くとはただその姿を写し取ることではなく、魂そのものを描くことなのだ」と気づきます。
国の重要文化財になっている作品『女』は、碌山が想いを寄せた女性・相馬黒光への苦悩を表現した傑作ですが、この作品を最後に30歳という若さで亡くなっています。
臨終の場に黒光らがいて、静かに息を引き取ったといいます。
美術館は焼き過ぎレンガを使用した総レンガ造りです。焼き過ぎレンガは、普通のレンガと比べ高温で十分焼き込んであるため、強度が強く耐久性があり吸水性も低い性質があります。
当時の穂高中学校(現穂高東中学校)の生徒たちが、放課後のボランティア活動でレンガを運んだといいます。
側壁と隅部に耐震強度のためバットレスをつけています。
建物正面にポーチをつけ、側面は半円アーチの窓が連続します。
また、正面南窓と背面北窓にバラ窓が施され、碌山の精神的な支えとなったキリスト教の教会を表現しています。
下は館敷地内にある「美術の倉」と命名された収納庫です。昭和45(1970)年に造られています。
高床式の基礎に使用され、校倉造りの木造部と合わせ、いい雰囲気を醸し出しています。
尖塔(せんとう)の上に避雷針を兼ねたフェニックス(不死鳥)が飾られています。
尖塔内の「碌山の 鐘」は、今も毎日3回、手動で打ち鳴らされ安曇野に心地よい音色を響かせています。