建物の大棟などの末端を飾る瓦を、鬼瓦と呼びます。雨水が家の中に入り込んでくるのを防ぐために取り付けられています。
雨水が浸透しないよう装飾が施され、初めはハスの花模様をあしらった平面的なものが多く見られたそうです。
時代を経る中で、魔除けとして強さ、恐ろしさを強調するものに取って代わり、江戸時代になると立体的な鬼面が主流になり、武家の家だけでなく一般の民家にも取り付けられるようになったということです。
鬼面は、天地すべての悪霊を追い払うと信じられていましたので、この時代盛んに用いられ鬼瓦という呼称も定着しました。
上の「蔵久」の鬼瓦は、築200年の蔵を現在地に移築したもので、悪霊が寄りつくのを強く拒む形相の鬼面は、意匠からいっても相当古い年代ものではないでしょうか。
しかし、鬼面は近隣や来客ににらみを利かすという理由で、だんだん採りいれられなくなり縁起のいい動物や、家が火災に遭わぬように「水」という文字瓦が流行するようになりました。
ですから、鬼瓦の部分に鬼面があるのは、現在ではそう多くはありません。でも、鬼瓦という名称は残ったというわけです。