屋根の上に、こんな球根が芽を出したような形の飾り瓦を目にしたことはありませんか?
これは如意宝珠(にょいほうじゅ)といい、望んだものをすべて出し、願い事を何でもかなえてくれる神秘的な宝の珠(たま)のことで、上方が尖って火炎の燃え上がったような形をした珠をいいます。
今で言うならば、さしずめ「ドラえもんの四次元ポケット」に当たるのでしょうか。
如意宝珠は、如意輪観音、地蔵菩薩、虚空蔵菩薩、吉祥天、孔雀明王などの仏が持つものとされ、それらの仏像などでも手にしている姿を見ることができます。
「宝尽くし」という日本の伝統的な文様があります。吉祥・招福を願う気持ちが縁起物の形になり、着物や器物を飾ってきました。
宝尽くしは、如意宝珠、鑰(やく)、打出の小槌、金嚢、隠蓑、隠笠、丁字、花輪違、金函などが代表的な文様ですが、時代・地方により多少の違いがあるようです。
右側に如意宝珠が見えますが、鬼瓦に見える鍵のような装飾が鑰です。鑰は蔵を開けるときの鍵になります。
日本の古代の一時期,律令法という体系を基に国家統治がなされました。中央集権的な官僚制国家機構や国家的土地所有を行い、良・賤の身分制度を敷いていました。
地方の国府にとって朝廷から預かった「公印」(印)と、財宝の入っている
今でも石川県七尾市、熊本県八代市、宮崎県西都市など各地に「印鑰(いんにゃく、あるいは、いんやく)神社」の名がついた神社があります。
鑰は、こうした歴史を背景に、宝を象徴するものとして文様に用いられ現在にいたっているわけです。
上の鑰は、東御市の法善寺に飾られていたものですが、ここの装飾瓦は宝尽くしが満載です。鑰の左に珊瑚(さんご)があり、その左に真珠貝、さらに隠蓑があります。
打ち出の小槌があり、その左手に珊瑚があります。右にあるのは巾着でしょう。
経文の巻き物もありましたし、その右にあるのは宝尽くしの七宝の一つである真珠貝(アコヤ貝)の貝柱のように見えます。
縁起物にも宝尽くしにも関係ありませんが、善光寺の近くの宿坊の屋根にネコがいました。居眠りをしているようです。もちろん飾り瓦のネコです。