信濃国分寺境内の堂塔伽藍で、もう一つ鏝絵があるところがあります。
地蔵堂で、江戸初期の延命地蔵像と閻魔大王、冥界十王を祀っているということです。
ちなみに十王は、冥界の住人の裁判官で七日ごとにそれぞれの裁判官である王が審判すると言われます。故人の魂が少しでも早く極楽へ行けるようにするため、遺族が法要を営むことによってそれを助けるという信仰が生まれました。
閻魔大王は、亡者が六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上)の何処に生まれ変わるかを決定する力を持っているということから特別に知られているわけです。
その正面の白壁部分に対の飛天が掛かっています。
オリエントの神々は翼を持った姿で描かれるそうですが、仏教の飛天は翼を持たず天衣(はごろも)をまとった女性像として描かれることから天女と呼ばれます。
こちらは、羽衣を身に着け空を飛びながら、琴を奏でているようです。
飛天は、仏教では阿弥陀如来などの浄土の空を飛びながら天の花を散らし、あるいは天の音楽を奏し、あるいは香を薫じて仏を讃えるということです。
もう一点は、縦笛を口にしています。天の音楽とはどんな音色なのでしょうか? 聴いてみたいものです。
地蔵堂は昭和57(1982)年に再建しているということですので、この2点の鏝絵もこの頃のものかもしれません。