山深いところに旧家があり、母屋の客間にみごとな鏝絵があるとの情報を得ました。女主人が自家栽培したそばを打ってくれるとも。これはもう出かけなければ…。
旧会田宿から山側へつづら折れの道を走り、どんどん上って行きます。途中人家がポツリポツリとあるくらいで、本当にこの先に蕎麦屋さんがあるのかと思うほど深く山を上ります。
やがて目の前に数件の家々が見えました。なかでも大きな家があり、すぐに見当がつきました。母屋の奥手にソバをいただく客間があり、そちらへ。元は蚕室として使っていた建物を改造したといいます。
予め伺う時間を昼近くと連絡しておいたので、午前中にそばを打って待っていました。そばが茹であがるまでの時間、さっそく鏝絵のある母屋を案内していただきました。
みごとな吉祥文様の鏝絵です。老松の大樹を挟んで丹頂鶴が2羽飛翔し、右側から満月が照らしています。
初めて拝見した室内にある鏝絵です。床の間にある書院欄間(らんま)の上の長押(なげし)部分に描いています。欄間の上に長押があるという造りを見たのも初見になります。
母屋を着工したのが明治4(1872)年、完成したのが同19年だったといいます。先祖が所有する山から木を伐り出し、時間を掛けながら思い描いた家造りをしたということです。昭和初期に客間を改装した時に、この鏝絵を入れてもらったそうです。
鏝絵の下の筬欄間(おさらんま)にも注目です。細かくて長い沢山の縦の桟が入っています。
鏝絵は会田本町の左官職人さんの手によるもので、銘も残っています。
訪れたのは積もった雪もかなり融け始めた2月の半ば。寒気がぶり返し底冷えする寒い日でしたが、蕎麦のコシがしっかりしていてなんとおいしかったことか。自家栽培のソバの実、茹で上がりを冷たい湧水でしめたソバ、これはたまりません。
たっぷりいただいた蕎麦と、みごとな鏝絵に満足した一日でした。
蕎麦をいただいた部屋の2階から母屋をのぞいた風景です。
* この鏝絵がある蕎麦屋さんのWebは、こちらです。