前回に引き続いて四賀の鍾馗さんです。
捕えた鬼を足蹴にして懲らしめているようです。鬼より強い鍾馗の面目躍如といったところです。こんな具象的な形で象られた鍾馗さんも珍しいものです。
素朴な感じを漂わす鍾馗さん。小屋根の上に載っていました。明科・下押野に載っていた4方位を睨む鍾馗さんと同じ職人の手による作です。
刀剣が半分欠けています。ここの家の主人の話では「新しく屋根を葺いた時、(別の瓦職人の身体が当たり)折れてしまっただ」ということです。
遠くに視線をやり、疫病や悪霊が立ちいらないように家を見守っています。
そんな鍾馗さんが、がんじがらめに縛られて固定されています。屋根上に風がもろに当たるのは分かるのですが、少しやり過ぎでは…。
下はこれまでの地域から少し離れたところにあった鍾馗さん。凛々しい顔つきで正面を見つめています。上の鍾馗さんも、せめてこんな具合に止めてほしかった…。
「向こうに鬼がいるだ。鬼をにらみ返しているだ」と、畑作業の手を休めて話してくれたここのご主人は、少し離れたお向かいさんを指差しました。
「睨みかえし」といわれる鍾馗さんの上げ方の一つで、奈良をはじめ関西で多く見られる上げ方の手法です。
信州では「睨みかえし」、「お寺鍾馗」、「行き止まり鍾馗」など古都でよく見られる上げ方の法則性を踏襲しているのは、ほとんどといってよいほどありません。
鍾馗さんが上がっている宅の家人から、こうした正統な上げ方を意識しているというのは初めて聞きました。
ここのご主人、鍾馗さん撮影に梯子まで用意してくれました。