赤レンガ建造物を尋ねて-8  高い水質で沈殿槽のない城山浄水場(松本市)

松本市の桜の名所の一つに、城山公園があります。その公園入り口手前に松本市城山配水池があります。建造されてから90年近くになる浄水場の遺構です。

松本市は、市内を女鳥羽川、薄川、牛伏川、奈良井川、梓川が流れます。北アルプスや近隣の峰々からの水が扇状地を形成しました。

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昔から豊富で良質な湧水に恵まれ、自然流をそのまま生活用水として利用したり、やや標高の高い地域では地面を掘り水脈を探し当て井戸を造ったり、導水してきた水を集水枡に受けて使う引井(ひきい)などを造って水を確保してきました。

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しかし、産業も隆起し人口も増えこうした方法では水が賄いきれなくなって来ていました。

また、たびたび大火に見舞われ明治45(1872)年にも大火事で被災したことから上水道敷設の必要に迫られます。

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大正6(1917)年に調査を開始し同8年に松本市島内(当時は東筑摩郡島内村)の湧水を利用し、城山に配水池を造ることを決め、工事に取り掛かります。

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配水池は同市城山の中腹斜面を削り取り二つの池を造り、やがて約800mの送水管と本支管約5万5000mに及ぶ配水管の敷設をします。

島内で取水した豊富な伏流水を電動ポンプで配水池へ引き揚げ、貯水池から90mの落差を利用して配水する形を取りました。

 

同12(1923)年から部分給水をはじめ、工事が完工した13年には3500所帯・2万人に給水しました。高い水質のため沈殿槽のない配水池で、全国的に見ても類例がないといいます。

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以来、新施設ができる昭和44(1969)年までの46年間、市民に高い水質の水を供給してきました。

現在、貯水池のほかに、レンガ造で円柱形の着水井点検棟が1、貯水槽点検棟 が2棟残っています。盛り土した貯水池の壁面もレンガを貼り付けています。

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当時としては、最高の建材だったレンガをあえて使用したところに関係者のこの上水道敷設にかけた思い入れが込められているのかも知れません。

 

 

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