信州の鏝絵に見る左官職人の技-4   戸袋に描かれた鯰と鯉の鏝絵

小県郡(ちいさがたぐん)長和村に鯰を描いた鏝絵が飾られていると聞いてから1年ほどになります。一度訪れたのですが、探し当てられませんでした。

廃業した石屋の蔵という情報しかありませんので、今度も多少の不安がありましたが、必ず見てやろうと気持ちを新たに山越えして向かいました。

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前回訪れていない幹線道を走っていてキョロキョロしていた目に飛び込んできたものがありました。「これだ!」と思わず叫んでしまいました。

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廃業した家屋となると、いつ取り壊されても不思議ではないとの思いがありましたので、まだ残存していたことは喜びでした。

蔵窓が4カ所もあり、全体的に見て蔵といってもかなり斬新なデザインになっています。

大窓の奥に障子が見えますので、ここは仕事場に併設された居間か、休憩室に使われていたのでしょう。2点の鏝絵が飾られていたのは戸袋ですが、窓部分には雨戸など何もありません。

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期待どおりのすばらしい造形です。色を使わず白漆喰だけで完成させ、立体感を浮き立たせています。

こちらは、信州の名産の鯉でしょう。

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そして、これは鯰を表わしているのでしょう。尾びれを曲げ、あたかも泥水の中を泳いでいるようです。髭も小道具を使用し、より立体的に写実しています。

2点とも魚の両側に同じ紋様が描かれています。紐状のものは釣り糸でしょうか。左手に描かれているものは、下から獲った魚を入れる魚籠(びく)、その上が苫屋なのでしょうか?

それでは一番上はなんでしょうか? これが思いつきません。

鏝絵でこれだけ立体感を出すように制作するためには、漆喰を薄く何度も何度も重ねて塗って行かなければなりません。

漆喰を塗る場所によって鏝を使い分けながら、塗り重ねていくと言った相当の根気仕事ともいえます。これを制作した左官職人さんの技と根気に脱帽します。

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裏側に回って見ると、2ヵ所にハニーサックル(ニオイニンドウ)紋様が施されていました。窓の配置とうまく調和しています。

この左官職人さんの造形センスの良さに驚くばかりでした。

* 鯉といえば、長野県佐久地方の特産品で、おいしい鯉料理もバラエティーです。毎年5月の連休中に「鯉祭り」も催されています。

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