信州の鍾馗さんは大棟に上がっていることが圧倒的に多く、小屋根の上でもたまに目にすることがあります。探索の時は、視線が自然と屋根に向かいます。
外塀や門柱の上というのは滅多にありませんが、短い期間内に立て続けに3体に出合いました。いずれも安曇野市内で見たもので、大棟ばかり見ているとあやうく見落とすところでした。
時どき通る豊科高家(たきべ)の道路沿いに、漆喰壁の塀を巡らせた大きな家があります。
確か昨年夏から秋にかけて、外塀の瓦屋根の改修工事をしていました。
今年に入ってそのお宅の前を通った時、新しく葺き替えられた瓦屋根に鍾馗さんが載っているのに気づきました。
記憶に間違いがなければ、改修前は同じ場所に亀の飾り瓦が上がっていたはずです。改修を期に鍾馗さんを蔵出しして来て模様替えしたのでしょうか。
破損した口から胸元にかけてセメント補修したような痕が大きく見えます。捨てられることなく、補修とともにいま再び復帰したということになるのでしょうか。
桜が散ろうとしている時季、堀金烏川の古い大きな屋敷の側を通っていた時やはり漆喰壁の外塀に鍾馗さんが上がっていることに気がつきました。
木型(または鋳型)で型抜きした量産ものですが、烏川では初めて見た鍾馗さんです。
上の2体は外塀の上にありましたが、こちらは門柱の上に飾られていました。別の日、豊科田沢で見かけました。
瓦鍾馗研究家の服部正実さん(京都府在住)や小沢正樹さん(愛知県在住)からも異口同音に「門柱の上というのは珍しいです。初めてですね」と話されています。
服部さんは「親指と人差し指を立てていますが、人
差し指と中指を2本合わせた『刀印』を結んでいる鍾馗はよくありますが、こんな『印』は初めてです。右手に持っている剣もこの鍾馗さんの為ではなく別の用
途で作られた既製品だと思いますが、こんな形でこんなぴったりのサイズのものがよくあったものだと思います」と評されています。
さらに小沢さんは「全体の印象は素朴ですが、顔の表情など、細部は結構丁寧に作りこまれているように見受けました」と印象を語っています。