鏝絵の図柄としては、あまり目にしない鍾馗が飾られている漆喰の蔵です。安曇野の近くの山形村にあります。
瓦鍾馗に魅せられ、安曇野はじめ信州各地の探索を続けている過程で鏝絵に出合い関心が高じたものとしては、この鏝絵に遭遇した時は、目を疑うような驚きと喜びでした。一挙両得の喜びとでもいうのでしょうか。
鍾馗を描いた鏝絵は島根、佐賀県などで数点が確認されているだけで、数多くの鏝絵が残っている大分・安心院(あじむ)にもないようです。
この鏝絵に描かれている鍾馗さんの表情も屹然としていて、家の守護をしてくれるといういわれをよく理解し描かれているといってもよいかもしれません。
額が前に出て鼻が低く、頬がふくよかな丸顔の女性を「お多福顔」(「おかめ」とも)と呼びますが、かつては多くの福を呼ぶ好ましい顔立ちとして好まれたり、災厄の魔除けとしても用いられたということがあったそうです。
縁起物として、酉の市で売っている熊手にお多福面が飾られることもこうしたことが由来しているようです。
松本市梓川でお多福さんが飾られている蔵に出合いました。
ふくよかでモナリザのようにほほ笑んだ顔の表情が、福を呼び込んできそうです。
関西には飾り瓦のお多福もあり、鬼瓦の上がっている屋根に対面する家で上げられていることがあるそうです。鬼面で追い払われた厄鬼が入って来ないよう笑い飛ばしてしまうという意味を込めているということです。
こちらの宅の周辺には、鬼瓦は上がっていませんでしたが…。
鍾馗とお多福―どちらも厄神から我が家を守るお呪いとしての蔵飾りといえます。
* 安曇野とその周辺で見ることができる鏝絵を「安曇野の鏝絵」として紹介しています。