信州の鏝絵に見る左官職人の技-16  養老の滝伝説(茅野市)

養老の滝伝説をご存知でしょうか? 養老の滝といっても居酒屋チェーンのアレではありません。岐阜県養老町に伝わる民話です。

それを題材にした鏝絵を茅野市御蔵田で見ました。若者が柴刈りの斧(おの)を腰に、そして流れ落ちる滝水すなわち酒を瓢(ひさご)に汲んでいます。

この孝行息子、左利きのようです。瓢を左手に持ち、差している斧も左の腰です。

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この家の当年86歳になる家主さんが庭にいました。立ち姿で撮影するには遮るものがあることを知って、納屋から脚立を出してくれました。

「おらのオヤジさんが造った蔵で、百年は経っているだ。おらは小さい頃からこの絵を見て育っただ」と話してくれました。「袴(はかま)の青色はもっと鮮やかだっただが、だいぶ色が褪せたなあ」とも。

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調査によっても鏝絵が数多い大分・安心院、島根、岡山県下などでも養老の滝伝説を描いた鏝絵はないようですので、この孝子伝説に因む絵柄は、ここだけかもと思っていたら…。

後日、同市北大塩を巡っていたとき 、もう一点の「養老の滝」説話を描いた鏝絵に出合いました。

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こちらの宅は養蜂業を営んでいるようで、蔵の横に整然と巣箱が積んであります。

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御蔵田の鏝絵は左利きのようでしたが、こちらは滝の左岸に構え右手ですくっています。斧も右腰に付けています。

全国的に類例のない養老の滝説話に因む希少な鏝絵が、茅野市に2点在ったことになります。

 

 

* 養老の滝伝説について詳しく書かれたブログはこちらです。

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