安曇野市三郷の路地裏に赤レンガ造りの蔵があります。生活道路に面した広い敷地に建っていましたので、ここを通った時、目に飛び込んで来ました。
この一帯の蔵といえば白漆喰となまこ壁、あるいは荒壁土を塗った素朴な味のする農家蔵がふつうですので、赤レンガ蔵は新鮮に映りました。
瓦葺きの屋根にしっかり組まれたレンガ、白漆喰の壁とは別の趣があります。補強用に折れ釘を打ってある桟や柱など縁取りの意匠も考慮されています。
長手で積んだ堅固な組み方が分かります。
母屋はディケア施設として活用され、家人は今ここに住んでいないということで、いつ頃に建てたものかを含め詳しく聞くことができません。
少し離れたところに、もう1棟のレンガ蔵がありました。壁面の一部にいつのころ入った亀裂か分かりませんが、縦に長く流れています。
蔵に装飾性はほとんどなく、実用面を重視して建造したのでしょうか。
周辺は田畑に囲まれていますし、すぐ近くに桑の木もあります。となると、昔は貯繭庫として使い、その後に穀物庫として使ったのかも知れません。
レンガ蔵となると、火災はもちろん寒暖や湿気からも貯蔵品を守る上で強い建造物です。ですから採取した繭の保存にも適していたのではないでしょうか。
港湾都市などにある大きな規模のレンガ倉庫にも歴史があり見ごたえもあるのですが、こうして地方の片田舎にもひっそりとたたずむ小さな蔵も、生活の匂いがして愛着や愛おしさが静かに伝わってきます。