佐久市はかつて岩村田藩1万6千石の城下町でした。ここに中山道の宿場がありました。岩村田宿、塩名田宿などです。
中山道69次のうち、江戸から数えて22、23番目の宿場でしたが、旅籠はいずれも10軒以下の小さな宿場だったようです。一説によると旅人たちは城下町の堅苦しさを好まず、敬遠したため大きく発展しなかったということです。
この岩村田宿に3体の瓦鍾馗があります。
そのうちの一つ、小屋根に載っている鍾馗さん。
この鍾馗さん、坐っています。瓦鍾馗を研究している小沢正樹さんによると鍾馗座像は「あまり多くはない」と言います。
さらに、この鍾馗さんの左手に注目すると…。
手にしているのは、討ち取った鬼の首です。この鍾馗さん、鬼との格闘で疲れ、腰かけてひと休みしているのでしょうか?
やはり小沢さんの調べでは、鬼の首を手にした鍾馗さんは、全国的に見てもあまり多くはなく鬼の首を携えている鍾馗さんは、長野県に多く見られるということです。
そういえば、わたしもこれまでに鬼首を手にした鍾馗さんは、5体、鬼を懲らしめている鍾馗さんは9体を目にしています。いずれも長野県内です。
そうなると、上の鬼の首を手にして坐っている姿の鍾馗さんは、全国的にも類例がない鍾馗さんになるかもしれません。
上も下も、すぐ近くにあった鍾馗さんです。比べると、すぐに分かるかと思いますが非常によく似ています。顔全体、衣のたなびき具合などが酷似しています。背面に板瓦があるかどうかの違いといってもいいかもしれません。
同一作者か、その弟子が作ったものか、はたまた別の人が真似て作ったものかは分かりませんが、よく似ているものが両隣りに掲げられています。
こちらの家人の話では、かつて「隣りにも立派な鍾馗さんが上げられていた」ということです。
今は更地になっていて建物は見られません。その鍾馗さん、今はどうしているのでしょうか? 健在で屋根に上がっているのでしょうか?