暑かった今年の夏、どのようにして暑さをしのぎましたか? 心と身体はリフレッシュできましたか?
先だっての休日、木曽(上松町)にある森林セラピー基地・赤沢自然休養林へ行って来ました。ここは森林浴発祥の地としても知られています。
まだまだ残暑の厳しい日があるかも知れません。都会の喧騒を離れ、自然に帰る涼やかな森の散策、お薦めです。
木曽といえば、古くから木曽ヒノキをはじめ木曽五木(ヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロ、コウヤマキ)が全国的に有名で、建築用材として木曽の山々から伐り出され盛んに出荷されてきました。
伐り出された木材は、森林鉄道で運搬されました。当初は手押しのトロッコでしたが、大正4(1915)年、アメリカから蒸気機関車「ボールドウィン」号が導入されました。現在、駅構内にある森林鉄道記念館に静態展示されています。
(伐り出した木材を運ぶ在りし日のボールドウィン号。煙突は、オリジナルの防塵構造を備えた構造になっているといいますが、写真ではすごい排煙を見せています)
蒸気機関車は、昭和30年代の半ばまで使われましたが、その後ディーゼルエンジン車へと変わります。
ディーゼル機関車も昭和50(1975)年に自動車運送に変わったことから、森林鉄道は幕を閉じます。
しかし、その後「21世紀に残したい自然100選」や「全国森林浴の森」に相次いで選定されたことなどから、昭和62(1987)年に観光鉄道として運航を再開しました。
現在、訪れた人たちを運ぶ足として休養林エリアの中央部を走る形で 、片道1.1kmを運航しています。
そのディーゼル車両に乗ると、ヒノキのすぐ傍を通り木陰のなかを進み、北側の停車場まで運んでくれます。
休養林内を流れる木曽川の支流に架かる鉄橋の上も走ります。
終点に降り立つと、周りはヒノキの森です。ここから整備された遊歩道が続き、8コースに分かれる散策コースを選ぶことができます。
どのコースも標高が1000mを超えていますので、深閑とした森の中を通りぬける涼風が心地よく、安らげます。
そして、木陰、ところどころ木漏れ日の中を、樹林の放つ癒し物質・フィトンチッドを身体いっぱいに浴びながら歩くのは実に清々しいものです。
樹齢300年のヒノキがもたらしてくれる大自然の恵みといってよいでしょう。
ヒノキの根元にアスナロの苗木が育っています。アスナロは日陰でも力強く生長するそうで、ヒノキの森はアスナロの生い茂る森へと変容し始めているということです。
樹木が人の身体にもたらしてくれる働きを教えてくれる解説板も建っています。
樹林の側を渓流が流れています。川底が透き通って見えるほどの清澄さです。
ですから、生息するイワナやアマゴなどの川魚が遊泳する姿を見ることもできます。
伐り出した材木を川の流れを利用して下流域まで運ぶため、堰(せぎ)を造った遺構も残っています。川水をいっぱい溜めて材木を浮かべ、堰を壊して一気に下流へと流したということです。
せせらぎの音を聞きながら岩盤の上でひと休みすることもできます。
川の音を耳にしながら 緑陰のなかを散策するのも、また格別です。
川岸へ下りる階段や足場も設置されています。
遊歩道は木道やヒノキのチップを敷いていますので、小さな子どもやお年寄りも安全に歩けます。
水がきれいで冷たくもないことから、子どもたちも水遊びに興じることができます。子どもたちにとって渓流で泳ぐことは、貴重な体験にもなることでしょう。
赤沢休養林は、やがて訪れる紅葉の季節も見事に色づいて人々を喜ばせてくれるということです。
赤沢休養林へは国道19号から入りますが、沿道の近くに「寝覚(ねざめ)の床」(上松町)があります。
木曽川の激流が、長い間に渡って花崗岩の岩盤を水食してできたもので、大正12(1923)年史跡名勝天然記念物に指定されています。
19号をまたぐ形で「桃介橋 」(南木曽町)が架かっています。福沢桃介が水力発電開発のために木曽川に架けた釣り橋です。
全長247mの日本で最も長い木橋で、近代化遺産として国の重要文化財に指定されています。