飾り瓦の探索で三郷周辺を回っていたところ、路地裏で赤レンガ建ての蔵に出合いました。
この一帯の蔵といえば白漆喰となまこ壁、あるいは荒壁土を塗った素朴な味のする農家蔵と思い込んでいたので、赤レンガ蔵は新鮮に映りました。
蔵の先に本棟があり、かなり広いお屋敷になっています。ちょうど植木職人さんが、刈り込み作業をしていましたので、許可をいただき屋根瓦を見せていただくことにしました。
母屋に面して和式の庭園があり、庭木の手入れは立派な通用門を通って出入りします。その通用門の上に急流を登る鯉が四匹…。
あの黄河のいくつもの滝を登った鯉です。こちらのお宅は現在、宅老施設として使用されていて、持ち主の方は東京在住とか。
なにか事業を起こし成功した証として、登龍門を登る鯉を飾ったのでしょうか。
登龍門を登り切った鯉は龍になり、天に昇ったといわれます。
それを示すように、通用門の上には龍が対で飾られていました。
この故事来歴については、こちらでも触れています。
豊科飯田のこれも立派に構えた門の上にも…
逆巻く流れのなか、必死に目的地を目指す一匹の鯉がいました。
豊科田沢の現在も瓦店を営む宅に、鬼瓦の屋号横に鯉がいました。
もう一軒、すぐ近くでかつて瓦業を営んでいた宅にも、天に向かう鯉が対で飾られています。大願成就の意を込めたのでしょう。
龍といえば、リアルに描かれた鬼瓦の龍が旧四賀村(現松本市)中川にありました。
西日本ではさほど珍しいものではないようですが、信州では鬼瓦といえば鬼面が圧倒的に多く、龍の鬼瓦は少ないように思われます。これまでに目にしたのは、この一体だけです。
想像上の生物とは言え、写実的に描かれていて右手の方に胴体も伸ばしています。