どうしても新そばが食べたくて、戸隠へ出かけました。いつもは鬼無里(きなさ)か長野を経由して行くのですが、今回は初めて俳人・小林一茶の故郷でもある信濃町から向かいました。
一茶の墓とゆかりの地に立ち寄りながら。
墓の近くに俳諧寺の名がある庵が、静寂な佇まいの中に、ひっそりとあります。多くの文人墨客が訪れています。
一茶を偲び詠んだ句や歌が自筆でしたためられ、庵の天井板としてはめ込まれています。作家の田辺聖子さんは、一首詠んでいました。
一茶は、一族の墓のなかで眠っています。
ここから目指す戸隠までは、22㌔㍍。霊峰・戸隠連山は前日からの荒れた天気で雪化粧しています。
いつもの蕎麦屋さん「そばの実」に着いたのが、ちょうどお昼時。奥社の近く、鏡池へと続く道の入り口にあります。
店の周辺は他に建物などなく、雄大な自然が広がるだけ。店内からそんな風景を存分に楽しめるように、ワイドな窓にしているのがうれしいですね。ブナが葉を落とし、カラマツが黄葉していました。
春は、カタクリ、ミズバショウ、ギョウジャニンニクなどの野草が、この店の周辺に顔を表します。
いつものように、先ず、そばがきから。熱い湯でそば粉を十分練り上げます。ふんわり、やわらかくアツアツに仕上がったそばがきに好みの薬味を乗せ、そばつゆをかけていただきます。
ここのそばがきは、いつ食べても感動します。ひたすら練り上げた、そば職人さんの心がこもっているのが伝わってきます。
次は、霧下そばです。
昼夜の寒暖差が15度以上あるところは、朝晩に霧が発生し良質のそばが育つといわれます。戸隠、黒姫山麓、開田高原が、霧下そばの産地として名が知られ、収穫したそばの実を殻つきのまま乾燥させた玄そばを使って打ちます。
石臼で粗挽きしたそば粉を打ちますので、野趣豊かで喉ごしも格別です。一日15食の限定で、この日は幸運にも食べることができました。
そばつゆでもよいのですが、細かく挽いた岩塩をうすくまぶせていただくと、しっかりした腰の強さと弦そばのほんのりとした甘さが口中に広がるのが楽しめます。
ざるそばです。このそばの盛り付け、戸隠独特のもので「ぼっちもり」といいます。横に3束、縦に2束の形で盛り付けるのが定番。
弦そばを挽いたときに香る風味を逃さぬために、冷蔵保存した実を挽いて深山の澄んだ冷水でしめますので、そばの旨さを十分満喫できます。
新そばのおいしさを堪能した後は、そばチーズケーキで仕上げです。
そば粉をふんだんに使いスポンジを作っていますので、チーズの重さも感じません。甘さも控えめ、デザートとしてはもってこいで、そば茶がよく合います。
〔 蕎麦処 そばの実 〕 長野市戸隠3510-25/AM11:30~PM4:00、/定休日:木曜日第3金曜日/TEL 026(254)2102
*詳しくは、こちら です。
戸隠神社奥社は、ここのところのパワースポット人気に加え、女優・吉永小百合さんがJR東日本のTVコマーシャルに出演して参道の杉木立を紹介したこともあり、大変なにぎわい。ゆっくり散策できそうもないほどの混みあいが続いていました。