安曇野が生んだ映画監督・熊井啓の足跡を知る本

安曇野が生んだ映画監督・熊井 啓さん(1930~2007)がメガホンを撮った全19作品と人生をたどった「熊井啓への旅」が発刊されました。

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熊井啓監督は安曇野市豊科で生まれ、大学まで隣の松本市で過ごしました。卒業後、上京し独立プロの助監督を経て、映画会社・日活に入社し映画監督として活躍しました。監督としてのテビューは「帝銀事件・死刑囚」で、この作品から骨太な社会派監督として知られるようになりました。

「海と毒薬」でベルリン国際映画祭審査員特別賞(銀熊賞)、松本サリン事件を取り扱った「日本の黒い夏―冤罪」で同特別功労賞などをはじめ国内外での受賞作品が多数あります。主な作品に「黒部の太陽」「忍ぶ川」「サンダカン八番娼婦館・望郷」「深い河」などがあり、生涯全19作品を遺しました。

この本は、19作品の全部と人生の歩みを考察し、監督は何を考え何を描こうとしたのかを丹念に調べ、監督の時々のエピソードや作品制作にいたるまでの裏話なども拾い出して、興味あるおもしろい読み物にしあげています。

安曇野、松本、塩尻などの県中部域をエリアとした日刊の地域紙『市民タイムス』に、長期連載された記事を一冊の本にまとめあげたもので、筆者は映画にも詳しい赤羽康男記者(編集委員)です。作品の舞台となったり、ロケ地となったりした現場へも取材の足を伸ばし、熊井作品を掘り下げ、新聞での連載は90回に及びました。

連載期間中、わたしも愛読していた一人で、この企画記事が載る毎土曜日を心待ちにしていました。「忍ぶ川」を取り上げた稿では、この映画ができるまでの曲折と秘話が細かく記され、若いころに観た雪中を馬そりが雪煙を舞い上げ、鈴の音を高く響かせて走る場面が蘇ってきました。

映画監督の大林宣彦さんがこの本を読み、「人は何故映画を作るのか、僕らは何故映画が必要であるのかという映画の筋道が、その極めて根本的な所で見えてくるのだ」と、書評しています。

 『熊井啓への旅』(市民タイムス編 赤羽康男 文・写真) 郷土出版社刊  1680円

 

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